世界最古の現役ビール醸造所がプラハにあるらしい~世界最高峰の品質でビールを量産するチェコ

チェコ歴史あれこれ

なんだかビールネタばかりで申し訳ございませんが…
私のブログのタイトルが一応「チェコの現地ニュースと歴史」なもんで、そうなるとやはりビールは絡んでまいります…チェコですから。

と、いうわけで、ひとまず現存中世界最古のビール醸造所と言われる場所のご案内でございます。

ブジェヴノフ修道院(Břevnovský klášter 住所:Markétská 1, Praha)

この修道院に行くと現在もビールの醸造を行っております。
ここ、地元の人間の間ではよく知られている修道院なんですけど、ガイドブックなどには載っているのでしょうか。

で、このブジェヴノフ修道院が最古、という事に対して「チョット待った!!」と申し立てねばならぬ所がございます。
そこはドイツのヴァイエンシュテファン醸造所
というか、こっちの方が全然知られているのでヴァイエンシュテファン醸造所が世界最古と信じて疑わない人の方が圧倒的に多数かと思います。なのでその人達からすれば
「え?チェコのプラハの醸造所が最古だって?いやいや…
となるのは当然です。

ビールの歴史を話し始めたらメソポタミア文明まで遡らねばなりませぬので、 ”どこが最古か!” という話については正直どうでも良いのではないかと思いますが…、ビールにも色々と種類が物凄くたくさんありまして、ヴァイエンシュテファンのあるバイエルンのローカルビールはラガーです。このラガーというのはなるべく軟水な方が良いわけですが、かつて主流だったエールは比較的硬水寄りの水が使用されていました。これは単純に欧州の生産地では硬水地域が多かったからという事と、ラガーの低温発酵というのが冷却装置のない時代にはまぁまぁ難しい事もあり、非常に限られた地域でしか作られなかったからです。
そんなラガーの本場は歴史的にもまさにバイエルンとなるわけですが、当然すぐお隣のボヘミアでも古ーくからビールが盛んに作られておりエールが主流でした。ですが冷却装置が発達し始めた19世紀、ボヘミアのプルゼン市のビール会社で「よっしゃ!うちでバイエルンみたいなすげぇラガーを作ってみっか!」となってラガーの本場であるお隣バイエルンから醸造家ヨセフ・グロールというおじちゃんを召喚して共に試行錯誤した結果、本場バイエルンのラガーを上回る程の凄まじい透明度と黄金色の切れ味最高なビールが完成してしまいまして、これが現在日本でも一般的な”ビール” と呼ばれるものとなります。
何故ボヘミアのプルゼンでそんなビールができてしまったのかは色々な話はありますが、まず欠かせないポイントは、この辺りはバイエルンを凌ぐほどの軟水地域だったという事です。
というわけで、日本でビールの歴史を語られる上でチェコについてはこのピルスナーウルケルまで全く出てくる事はありませんが、チェコの国土全体が豊穣な盆地で麦もすくすく良く育ち、なにやら世界最高峰の質であるホップまでも良く育つ土壌であるチェコはビールの歴史では欠かせない土地です。2023年、遂にザーツホップの産地ジャテツ(Žatec) はユネスコ世界遺産登録されてしまいました。ビールもワインと同様にその土地の土壌、水、気候が物凄く重要となってくるという事です。

 

ではここで修道院醸造所のサイトを見てみましょう。
https://brevnovskypivovar.cz/en/about-brewery/

”ボヘミア最古の男子修道院であるブジェヴノフ修道院は、993年の設立以来、ビール生産と密接に関わってきました。チェコの領土でのビール醸造に関する最初の文書による言及は、修道院に関連付けられています。醸造所は 1889年まで数回の休止を挟みながらここで操業していました。”

 

そしてもうひとつ、知る人ぞ知る、呑兵衛のためにあるサイト「VinePair」https://vinepair.com/articles/oldest-brewery-in-every-country-map/
で掲載されている「各国の最古の醸造所」で書かれたブジェヴノフ修道院の記事

”ブジェヴノフ修道院はプラハ西部にあるベネディクト会修道院です。その歴史の中で醸造作業は何度も中断されましたが、現在でもブジェヴノフスキー・ベネディクトというラベルでビールを製造しています。醸造所の定義にもよりますが、ブジェヴノフ修道院は世界最古のビール製造所です。”

 

これ見て驚いたのが、アメリカより日本の方が先なのね。(このマップではチェコ933と載っていますが、これは993の間違いです。)

 

これはですねー、ほんと微妙な話かと思います。
何が微妙なのかというと、「VinePair」でも書いていますが、ここのブジェヴノフ修道院ではこれまでの千年以上の歴史の中で何度か醸造が停止されているんですね。それを最古と言って良いのかどうか、という事なんです。結局は文書として記録が残っているところを”最古”と言っているだけで、記録には残されていない様な出来事も歴史上では多くあります。ひとまず千年の歴史の中でせいぜい四~五十年の違いですから。誤差みたいなもんです。

ですけどまぁどこが世界最古とかは正直あんまどうでもよくてですね、美味しいビールが飲めればいいんです。
この辺のチェコやドイツ、ベルギーのビールは世界的にも大変有名で、一応「最古」の順位として「VinePair」が挙げているのは

1.チェコ ブジェヴノフ修道院 ”993年”
2.ドイツ ヴァイエンシュテファン修道院 ”1040年”
3.ベルギー アフリゲム修道院 ”1074年”

ビール好きの方達は是非この三カ国周遊ツアーなんてものを催行して頂いてビールまみれの幸せな毎日をいっとき過ごしてみてはいかがでしょうか。

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